ハンドソーン製法とは|Khish the Work

ハンドソーン製法とは

製法へのこだわり

ハンドソーンウェルテッド製法(以下ハンドソーン製法)は、靴が工業化されて大量生産が可能になる以前のつくり方で、200年以上前から受け継がれてきた伝統的な製法です。
現在、工場生産の高級既製革靴で採用されることの多いグッドイヤーウェルテッド製法の元となった製法です。
どちらも中底のソール側にある「リブ」に「ウェルト」を縫い付ける事で、作業性や修理性を高めた製法ですが、そのリブ形状に大きな違いがあります。グッドイヤー製法が主に薄め(2~3mm)の革の中底に布状のテープをL字に張り付けリブとするのに対し、ハンドソーン製法では分厚い革の中底(4~6㎜)を直接加工してリブを作ります。
グッドイヤー製法の方が機械化が可能で部材のコストも低くなりますが、リブの硬さとそれによる中ものの厚みでソールが硬くなる傾向にあります。一方ハンドソーンは機械化は難しいですが中底そのものを手作業で加工するので、別部材が必要なく中ものの厚みも減ります。それによって履き始めから比較的ソールが柔らかく仕上がる傾向にあります。

Khish MTOの標準仕様は九分仕立て、オプションで十分仕立てを選ぶことができます。Khish Bespokeの標準仕様は十分仕立てです。
両者はどちらもハンドソーンウェルテッド製法に分類され、ウェルトを手作業で縫い付ける工程まではほぼ同じ製作工程をたどります。
この2つの仕立ての違いは、簡単に言うとソールを縫い付ける「出し縫い」をミシンで縫うか手で縫うかの違いです。
十分仕立ては数百針を手縫いするためミシン縫いに比べて圧倒的に手間がかかります。さらに機械縫いではコントロールが難しい細かな造作を手作業で緻密に行えるため、十分仕立てはより審美性を高めることができます。
しかしKhish九分仕立ては可能な限り十分仕立てに見えるようなディテールを追求しているのが特徴ですし、実用性に関しても機械縫いが手縫いに劣るということはありません。
美しく履き心地良く、耐久性の高い靴が欲しい方はKhish九分仕立てを、さらにメリハリの付いた審美性に優れたハンドメイドシューズが欲しい方は十分仕立てのオプションをお選びください。

履き心地へのこだわり

履き心地の面でいうとハンドソーン製法は履き始めから比較的柔らかく、馴染んだ後の不必要なまでのサイズ変化が少ないことが特徴です。
木型の形状をフルに履き心地に直結させられることや、よりメリハリをつけた造形が可能になることから、顧客の足にぴったり合わせるビスポークシューズでは主にハンドソーンウェルテッド製法が用いられます。
Khishではハンドソーン製法に合わせてハンドラスティング(木型に手で革を吊りこむこと)を行うことで履き心地の良さだけでなく、造形の美しさにも感動できるような靴作りを目指しています。

グッドイヤー製法は履き込むことで中底の下のコルクが体重によって沈み込み、足にフィットしていくという特長がありますが、足にフィットした後も沈み込み続け最終的に緩くなってしまうといったことが起きる場合があります。
ハンドソーン製法はコルクの厚みを薄くすることができるのでそういった不必要なまでのサイズ変化が起きづらい特徴があります。ではハンドソーン製法は沈み込まないのか?というとそうではありません。分厚い中底(5.5mmの牛革)が程よく沈み足の形状に沿ってきます。
しかしハンドソーン製法のフィッティングの最大のポイントはその沈み込みではなく木型にあります。
木型をいかに足の形状に合わせたものにするか、そしてそれをいかに靴へ反映させるかによって同じハンドソーン製法の靴でも全く違った履き心地になってきます。